犬の年齢階層は、0歳の幼年期・1~6歳の成年期・7歳以上の高齢期の3つに大きく区分されますが、一般社団法人ペットフード協会の「令和元年(2019年)全国犬猫飼育実態調査」によれば、犬の飼育頭数のうち7歳以上の犬が56.2%と過半数を占めており、このうち7~9歳の犬は18.7%、10~12歳の犬は19.2%、13歳以上の犬は18.2%という結果になっています。13歳以上の犬は年々増加傾向にあり、私たち人間社会と同じように犬の世界でも確実に高齢化が進んでいるということが見て取れます。
避けては通れないあなたの大事なワンちゃんの高齢化問題。高齢になると介護が必要な場面が増えていくこととなります。体力的にも精神的にも大変厳しい問題であることは私たち人間の介護と同じなのです。
既にワンちゃんの介護に直面している方やこれから直面するであろう方が抱く不安を少しでも解消できるよう老犬介護に必要なことやその対処法について見ていきましょう。
介護は自立を促すことが何より大切です
あなたがこれまで大事に育ててきた大切なワンちゃんが高齢になり、食事やトイレ・歩行などが上手に出来なくなったり、必要以上に時間がかかってしまう状況になった場合、あなたはどのような行動を取るでしょうか?
きっとワンちゃんの手助けをしてあげたくなることでしょうね。
だけど、まだ何とか自力で出来ることまで全てを手助けしてしまうとあなたのワンちゃんはどんどん虚弱体質になってしまいます。
そのような時は、ギリギリまで根気よく見守ってあげることが大切になります。犬の介護も人間の介護と同様にまずは自立を促すことが基本となることを忘れないでください。
ワンちゃんができることを確認してみよう
介護が必要となってワンちゃんをサポートするにあたって、ワンちゃんが自力で出来ることをまずは確認することが大切になります。自力で出来ることは時間がかかってもなるべく自力でやらせてあげましょう。
上手に出来なかったり、時間がかかるからといって決して叱ってはいけません。それらを解決できる環境を整えてあげるなどサポートしてあげることが必要となります。
高齢になると出来なくなってくること
高齢になったワンちゃんはこれまで当たり前のように出来ていたことが徐々に出来なくなっていきます。例えば、
- トイレまで我慢が出来なくなって途中でお漏らしをしてしまう
- ちょっとした段差を昇り降りするのに時間がかかってしまう
- お散歩で長い時間歩くことがつらくなってしまう
- 耳が遠くなり飼い主のあなたの声ですら聞こえづらくなってしまう
などがあげられます。
これまで出来ていた様々なことが徐々に出来なくなっていくワンちゃんの姿を見ることはとても心が痛むことです。だけど、決して悲しまないでほしいのです。
あなたのワンちゃんが自らの力を振り絞って出来たことを褒めてあげながら、これまで以上にたくさんの愛情を捧げてあげてください。
きっとワンちゃんは生きる力を得ることとなるでしょう。
ワンちゃんが出来ないことは手助けしてあげよう
介護には自立を促すことが何より大事だとお話してきました。
だけど、ワンちゃんがどうしても出来ないことは手助けしてあげることも必要です。手助けすることでワンちゃんがこれまでと同じように生活してもらうことを心掛けましょう。
ソファーに座っているあなたの横で過ごすことが好きだったのであれば、ワンちゃんのために小さな階段を用意してあげたり、お漏らししないようにトイレの数を増やしてあげるなど、実際に手を掛けないやり方でもサポートしてあげることは出来ますね。
「食事」・「歩行」・「排泄」をサポートする
手助けが必要となると言ってもどのように手助けすればいいのか具体的に分からないかもしれませんね。
ここでは生きていくうえで必要不可欠な「食事」・「歩行」・「排泄」についてサポートするうえでの”コツ”をご紹介します。
高齢になったあなたのワンちゃんのペースに合わせながらサポートしてあげてくださいね。
「食事」をサポートするコツ
老犬になると喉の筋肉が衰えてくるため食べ物を飲み込む力が弱くなってしまいます。噛む力も弱くなるため、カリカリと乾燥したタイプのドッグフードは水などでふやかしてあげたり、缶詰などの柔らかく消化の良い食事を与えてあげましょう。
食事をするときのワンちゃんの姿勢も大事になります。フードボウルを少し高い位置に置いてあげることで食べ物をスムーズに飲み込めるようになり食事が楽になりますよ。
自力で食事が出来ないワンちゃんの場合であれば、老犬用の流動食をシリンジ(針のない注射器)で食べ物を直接、口に注いであげて食べさせてあげることになります。ワンちゃんを膝の上に抱えて身体を固定し、口の端から少しずつ入れてあげましょう。勢いよく流動食を与えてしまうと喉に詰まらせてしまうので、ワンちゃんの食事のペースに合わせてあげましょう。
「歩行」をサポートするコツ
ワンちゃんにとって歩行は運動そのものであり、外でのお散歩は外の匂いを嗅いだりすることでとてもリフレッシュできます。これまでのように歩くことが出来なくなったからといってお家にずっとこもることはワンちゃんの心身に良くありません。歩くスピードは遅くても、途中途中で休憩も入れつつワンちゃんのペースに合わせて散歩させてあげましょう。
歩行に困難がある老犬であれば、カートを使ってのお散歩でもいいでしょう。あなたと一緒にお散歩しながら外の空気を吸い、外の匂いが嗅ぐだけでもワンちゃんはとても気分転換できるのです。また、歩行用のケアハーネスも便利です。老犬の胴体部分をしっかりと支えることでワンちゃんが自力で歩行できるようになります。
私たち人間と同じようにワンちゃんも寝たきりになってしまうと一気に筋力が落ちてしまい、虚弱体質になってしまいます。サポートすることで歩けるようになるのであれば、進んでサポートしてあげて運動させることが大切になります。
「排泄」をサポートするコツ
高齢になったワンちゃんは肛門の括約筋が弱くなるため、トイレまで間に合わないことが増えてきます。しかしワンちゃんが粗相をしたからといって、決して叱ってはいけません。ワンちゃんも好き好んでお漏らしをしているわけではないので、あなたに叱られてしまうととても悲しい気持ちになって落ち込んでしまいます。
ワンちゃんが粗相をすることが増えたのであれば、これまでよりもトイレの位置を近くにしてあげたり、トイレの数を増やしてあげるなどのサポートをしてあげましょう。
寝ている時間が増えたワンちゃんであれば、起きてそのままベッドでお漏らしをしてしまうこともありますので、そのような場合にはオムツをつけてあげましょう。オムツは24時間つける必要は必ずしもありませんので、まずは寝るときだけオムツをつけることから始めましょう。
介護を続けるためには無理をしてはいけない
あなたの大切なワンちゃんの介護のために、あれもしなくてはこれもしなくてはと自らを追い込んだ精神状態で介護してはいけません。介護に無理をしてしまうとあなた自身の体力や気力が持ちません。
あなたのワンちゃんも、あなたやあなたの家族が自分のことで苦しんでいる姿よりも、いつもと変わらない笑顔を見ていたいことでしょう。
介護に疲れたり、悩んだ場合は遠慮せずに家族や友人、獣医師さんなどに相談しましょう。きっと気持ちが軽くなることでしょう。また、介護施設や介護グッズを利用したりすることで、飼い主であるあなた自身が心に余裕を持って介護に臨みたいですね。
介護の様子を周りの人たちに伝えてみよう
私たち人間の介護と同様にワンちゃんの介護も「食事」・「歩行」・「排泄」などとても労力のいることです。あなた一人で抱え込み気分が滅入ってしまうこともあるでしょう。
そのような時は、あなたの周りの人にワンちゃんの介護の様子を話してみましょう。家族や友人・職場の人など誰でも構いません。SNSでワンちゃんの介護のことを発信してみることもいいでしょう。あなたに共感してくれる人やアドバイスをしてくれる同じような経験をした人がきっと現れることでしょう。
老犬ホームやペットシッターを活用しよう
もしあなたが仕事をしているのであれば日中の介護について悩むことでしょう。大切なワンちゃんのことですから自分で面倒を見てあげたい、見なければならないという気持ちになってしまってもおかしなことではありません。
しかし、先ほどもお話しましたように介護は決して無理をしてはなりません。自分で面倒を見てあげることができないのであれば、思い悩まず老犬の介護に熟練している老犬ホームやペットシッターなどの活用も検討しましょう。
飼い主であるあなたやあなたの家族がワンちゃんの介護の負担で疲れ切ってしまっては本末転倒です。ワンちゃんが最後に頼りに出来るのはあなたとあなたの家族だけなのです。
いざというときのために老犬ホームを探しておきましょう。全国に所在する老犬ホームはこちらから探すことが出来ますよ。
介護グッズも活用しよう
最近では犬用の便利な介護グッズもたくさん販売されています。「食事」・「歩行」・「排泄」などの介護グッズを活用することできっとワンちゃんの介護が時間的にも体力的にも楽になるはずです。
それはあなたの笑顔にもつながるはず。ですからワンちゃんのためにも積極的に介護グッズを活用しましょう。
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